まずは「海の宇宙館」から

天売港から徒歩5分の自然派必見の私設ミュージアム

ちょっとした予備知識がインプットできる展示施設
 天売島のような場所で自然を観察するとき、少しでもいいから予備知識や情報があったほうが、島の見え方や楽しみ方が深まるもの。旅行者のそんなニーズに応えるために設置されたのがこの展示館だ。だから、海鳥や花などの自然観察に出発する前に、ぜひここにに立ち寄ってほしいのだ。

大型写真・自然情報・大型モニターTVなど
 館内に入ると迫力ある写真が目を引く。島在住の自然写真家・寺沢孝毅が撮影したもので、この展示施設のオーナーを務める。海鳥の様子をはじめ、天売島のダイナミックな季節の移ろいが理解できるだろう。
 また、今、何が見られるのかが分かる渡り鳥や花の資料展示があり、特にバードウォッチャーは要チェックだ。天売島関連の図書や参考資料も集積されており、天売島を知ることができる。今後、ソフトを充実させていく予定の、50インチ大型モニターによる映像展示にも注目だ。

300円で何度も入館できる!
 入館料は300円で、シーズン中は入館フリー。ここを会場にミニ講座「フォト&サウンドライブ」を受講でき(要予約)、開催時刻は17:00から30分程度で一人600円。夕食前の一時、島の自然の話に耳を傾けてはどうだろう。
 喫茶コーナーやオリジナルグッズ販売もあり、また裏手の広場にはガーデンチェアーもあってノゴマのさえずりを耳にしながらゆったりできる。連泊する人は休憩などに何度も利用するといいだろう。

外周道路を一周する

起点となる港で自分に合った手段を選ぼう

観光バス、レンタルバイクと自転車、徒歩でも3時間
 島を陸上からぐるっと回ろうとするとき、その起点が天売港となることが多いだろう。ここから観光バスが出ているほか、車、自転車、バイクのレンタルショップもある。
 海岸に沿った道は一周10キロほどで、歩いても3時間ぐらいだ。穏やかな日ならば、じっくりと時間をかけて徒歩で見て回るのもお勧めだ。断崖沿いの道路は風が強い場合もあり、夏でも防寒着を必ず準備すること。とにかく自分に合った手段を選んで出発しよう。

島一周の見どころは……
 港を出発し、人家が立ち並ぶ道を進むと役場天売支所、消防、警察、郵便局などを経て、やがて人家が途切れる。長く続く急坂をくねくね曲がりながら進むと、赤岩展望台に到着する。一帯が穴だらけで、それはウトウという海鳥の巣穴。夕方7時過ぎに一斉に帰巣するさまは必見だ。この展望台からはウミネコ、ケイマフリなどが見られる。
 さらに続く上り坂を登りきると、海鳥観察舎の入り口がある。尾根の突端にある海鳥観察舎の無料望遠鏡で、断崖のウミウやオオセグロカモメの子育てが観察できる。また、眼下に見える湾にケイマフリが浮かんでいる。
 さらに進むと観音岬のウミネコ繁殖地へと至る。断崖沿いの道路淵には可憐な高山植物も咲いていて、自転車や徒歩だと楽しめる。
 断崖沿いの道路沿いに海鳥繁殖地が続く。道からそれたり、繁殖地内に入ることは厳禁。貴重な植物や海鳥の巣を壊す恐れがある。また、赤岩展望台から観音岬方向に、6月1日から8月31日まで一方通行となるので注意しよう。

ウトウナイトウォッチング

必見! 世界でここだけの壮絶な群舞は日没から

5月20日から7月20日頃までが見頃(年により変動あり)
 絶対に見逃せないのは、繁殖数60万羽以上のウトウの帰巣シーンだ。赤岩展望台がその観察ポイントとなる。宿を通して、午後7時頃に出発する観光バスを申し込んでおけばいい。巣穴の中の雛が孵化し、魚を持ち帰るようになる5月20日頃からが見ごろとなる。
 ウトウの帰巣はとにかく凄まじい。日没とほぼ同時に海の彼方から黒い点が迫ってくる。それは近づくにつれ、両翼の細かな羽ばたきが見えてくる。最初はまばらだった帰巣も、闇が深まるにつれてものすごい数になってゆく。無数の飛翔する鳥とその羽音が、頭上をひっきりなしに流れてゆく。やがて足元にウトウがどんどん降りるようになり、餌をくわえたウトウがドタドタ駆け回る。ウミネコや仲間のウトウが、その魚を狙おうとチャンスを伺っているからだ。そんな夜の壮大なドラマが7月20日頃まで毎晩続く。それ以降は帰巣数が減少していき、8月初めには見られなくなる。

真夏であっても寒さ対策を十分に
 天売島は、真夏であっても夜は風が冷たく、防寒着の準備が必要だ。7月初旬頃までは、強風の時だと真冬並みの上着が必要なこともある。風のない穏やかな日は、いつまで見ていてもウトウウォッチングは飽きることがないだろう。
 ウトウの繁殖環境を守るため、観光バスでの往復を推奨している。その他、観察はおおむね夜8時まで(観光バスが去るまで)、強い光は当てない、繁殖地内には絶対に入らないなどのルールを決めている。現場では鳥獣保護員や観光関係者の指示に従おう。

天売島フットパス

全国屈指の渡り鳥の宝庫はウォッチャーのマナーも日本一

島内陸部の森のなかに天売島フットパス「花鳥の小径」
 5月を中心に全国から多くのバードウォッチャーを迎え入れる天売島。そんな鳥好きがくまなく歩くのが、島の内陸部に整備された歩行者用の「天売島フットパス」だ。天売島の樹木のほとんどは植林されたものだが、それが大きく育って間伐などの手入れが必要なことから、そのために整備された歩道だ。自然観察する人にも利用しやすいようにつけられた。

マナーもすばらしい天売島
 5月を中心にオオルリやキビタキなどのヒタキ類、カシラダカやキマユホオジロなどのホオジロ類をはじめ、ウソ、オオマシコ、アトリなどたくさんの野鳥が観察される。いまや全国屈指の野鳥の観察ポイントだ。また、写真を撮るために餌付けをしたり、カメラマンが近づきすぎたりしないなど、マナーの面でも天売島を訪れるバードウォッチャーは全国一という評価が定着してきている。ぜひ、こうしたよき伝統を守りたい。
 野鳥にこだわりがない人でも、森林浴や植物観察にも適した歩道だ。ここをじっくり歩くためには島での連泊がお勧めだ。
 整備が進むフットパスのマップは、羽幌フェリーターミナルなどで手に入れよう。

船で海からウォッチング

海から見る断崖や海鳥は格別、ケイマフリも間近に……

観光船からの絶景は最高、海鳥をもっと身近に感じたいならボートウォッチングだ!
 天売島の断崖風景や海鳥をしっかり見るなら、海からが絶対お勧めだ。50人が乗船できる観光船(大人3000円)と、乗客が6人まで乗船できるボートウォッチングがある。
 天売港を出てボートが左側に回り込むと、そこからは断崖絶壁が続く。船は観音岬と呼ばれるウミウなどのコロニーにさしかかる。ここから本格的な海鳥繁殖地が始まる。高さ100メートルを超す断崖沿いを船が進み、ウミネコ、オオセグロカモメ、そして海面をかけるケイマフリなどに続々と出会える。幸運ならば、繁殖地の最終地点となる赤岩周辺で、ウミガラス(オロロン鳥)に会えるかもしれない。観光船は、約1時間ちょっとで島を一周する。
 ボートウォッチングは、朝6時と8時の2度出港する乗り合いボート。鮮やかな赤い足のケイマフリなど水面の海鳥を自然の姿のまま見せる操船技術は、乗船しているものを海鳥の虜にしてしまう。だから固定ファンが多い。時期を選べばウミガラスに出会える可能性も高い。

写真撮影やTV取材チームはチャーターボートの利用も
 「チャーターボート」と呼ばれる運行形態もある。2時間までのチャーターに対応し、時間延長も可。野鳥愛好家のグループや、テレビや新聞社などの取材用としてチャーターするケースが多い。
 要予約で問い合わせはネイチャーライヴ(01648-3-9001)、または海の宇宙館(090-4876-9001)まで。
 海からのウォッチングは素晴らしい反面、天候に大きく左右される。海が荒れた時はあきらめて、陸上からの観察に切り替えよう。